「暗がり坂」

［選評］
暗がり坂の難しい階段を丁寧な筆遣いで描き切っています。石と木材の描き分けもよく出来ています。板塀の経年変化の様子も鋭い観察力で捉えています。赤い格子戸をもう少し立てて描くとさらに良かったと思います。

「全部輝く金沢の町」

［選評］
浅野川沿い主計町あたりのたそがれ時の桜並木でしょうか。街灯やぼんぼりに早くも明かりが灯り美しい光の饗宴が始まります。色調の微妙な変化を繊細に表現できており作者の優れた色彩感覚を感じさせます。

「尾山神社の守り神」

［選評］
堂々とした拝殿を守るようにライオンのような脚の長い勇ましいこま犬が置かれています。堅牢な木造の拝殿、石の階段、青銅のこま犬、台座の石などそれぞれの質感まで感じられるような力強い作品に仕上がっています。

「武家屋敷跡 野村家からの陽射し」

［選評］
ほぼ左右対称の安定した構図と落ち着いた色彩によって、武家屋敷らしく精神性の感じられる室内空間を表しています。暗い室内に差し込む陽光によって一層おごそかな雰囲気が感じられます。

「金澤神社」

［選評］
あらたかな金澤神社の拝殿を細部まで真摯に捉えようとする集中力が作品から伝わってきます。白い雲、しっくいの白壁、おみくじの白、石畳の白の違いの表現が難しかったと思いますが、清潔感のある絵に仕上がっています。

「金沢武家屋敷跡」

［選評］
大きな敷石を使った石畳の見事さに圧倒されて描いたのでしょうか、実によく描けています。加えて古木の庭木の太い幹やよく手入れされた屋敷も力強く捉えていて健康的な作者の観察眼が感じられる作品です。

「金沢の台所」

［選評］
観光客で賑わう近江町市場のアーケードの看板を色とりどりに描いて明るく華やいだ作品にしています。未完成に見えるような部分もありますが、そこが時間的な揺れを感じさせてアニメーションのような動きも感じられます。

「おだやかなひがし茶屋街」

［選評］
ひがし茶屋街の見返り柳を透かして石畳の路をうまく捉えています。色彩のハーモニーが快く響き合い独自の絵画世界が作られています。水彩絵の具を、透明、不透明に使い分けて変化を持たせたところも良いと思います。

「昔のみやこ」

［選評］
金沢城石川門を見上げた角度で描いたことで迫力のある絵になりました。特に石垣をよく観察して色に変化をつけて描いています。見上げた空にお日様がのぞいていてやぐらの大きさを感じさせてくれます。

「緑にかこまれた池」

［選評］
落ち着いた色調で玉泉院丸庭園を描いています。さらに曲線で絵を構成しているため安らぎを感じます。広大な庭園や建物を画用紙におさめるのは難しかったと思いますが、上手くまとめられました。混色に工夫が見られます。

「金沢城」

［選評］
いくつかの色の塊として石川門を的確に捉えて描いたところがとてもリズミカルで明快な印象を受けます。色の配色も陽光を感じさせ健康な作者の感性を感じます。雲と空もこの絵にふさわしい形をしています。